NIWA
和館の縁側越しに望む池泉庭園

Garden Stories / 庭園 / 東京都目黒区駒場四丁目3番55号

旧前田家本邸 和館(駒場公園)

加賀百万石・前田侯爵家が遺した迎賓の和館と、原煕が手がけた庭

加賀藩主の流れをくむ前田家16代・利為侯爵が昭和5年に建てた、外国賓客をもてなすための和館。縁側から望む池泉庭園は、明治神宮の森の造営にも携わった造園家・原煕の作。銀閣寺を思わせる静けさが、駒場の住宅街の奥に残されている。

01 / 庭を知る

庭を知る

プロフィール、庭の成り立ち、歩く前に見ておきたい要素をまとめます。

加賀百万石の本邸が、駒場へ

前田家は、加賀百万石を治めた旧加賀藩主の家系である。明治の華族令で侯爵となり、本郷(現在の東京大学本郷キャンパス)に本邸を構えていたが、大正末に東京帝国大学との敷地交換が成立。16代当主・前田利為(としなり)侯爵は、東大農学部の実習地だった駒場の約1万坪に新たな本邸を計画した。

昭和4年(1929)に地上3階地下1階の洋館が、昭和5年(1930)に2階建ての和館が相次いで竣工。当時「東洋一の大邸宅」と称された。基本計画は塚本靖、洋館の設計は日本橋高島屋なども手がけた高橋貞太郎、和館の設計は京都・平安神宮の建築も残す佐々木岩次郎が担当している。

暮らしの洋館、もてなしの和館

洋館は家政の諸室まで取り込み、洋館だけで日常生活が完結する構成だった。ヨーロッパでの生活が長かった利為の希望が反映されている。対して和館は、外国からの賓客に日本文化を伝えるための迎賓施設。生活のためではなく、見せ、もてなすための建築である。橋本雅邦の扉絵や凝った欄間など、随所に明治・大正期の意匠が息づく。

茶室は、裏千家の代表的茶室「又隠(ゆういん)」の写しとされ、木村清兵衛の手による。

縁側から眺める、原煕の庭

和館の見どころは、座敷の縁側から望む池泉庭園にある。作庭は、明治神宮の森の造営にも関わった近代の造園家・原煕(はら ひろし)。現地の案内では、京都・銀閣寺の庭園との類似が指摘されており、落ち着いた中にも変化のある“中国趣味”の構成が特徴とされる。

なお、和館の庭にかつてあった煎茶室は、現在は金沢・兼六園に隣接する成巽閣へ移築され、「成巽閣煎茶室三華亭」として石川県の文化財になっている。

半世紀の変遷を経て

太平洋戦争で利為侯が戦死したのち、邸は戦後GHQに接収され、連合国軍司令官の官邸として使われた。昭和31年に和館と一部の土地が国有となり、昭和42年に都立駒場公園として開園。昭和50年に管理が目黒区へ移り、現在に至る。

洋館・和館はともに平成25年(2013)に国の重要文化財に指定された。和館の1階は昭和49年から無料休憩所として開放され、縁側から庭を眺めることができる。

要素

庭を読む

縁側から望む池泉庭園

和館の見どころは、座敷の縁側から一枚の絵のように切り取られる池泉庭園。庭の中を歩くのではなく、建物の内側から借景的に眺めるよう設計されている。視線の高さと開口の取り方が、庭の見え方そのものを決めている。

又隠写しの茶室と手水鉢

茶室は裏千家の名席「又隠」の写しとされ、木村清兵衛が手がけた。茶室脇には手水鉢(つくばい)が据えられ、客が席に入る前に身を清めるための、にじり口へと続く動線の一部を担っている。

銀閣寺を思わせる構成

現地の案内では、庭園側から見た構成が京都・銀閣寺の庭と似ていると紹介されている。落ち着いた中に変化を持たせた“中国趣味”の意匠で、迎賓の場にふさわしい格を保ちながら、過度に主張しない静けさがある。

02 / 庭仕事の視点

庭仕事の視点

剪定、石、水、陰影、園路の判断を、庭師の目線でほどきます。

01

原煕という造園家

作庭を手がけた原煕は、明治神宮の森の造営にも携わった近代造園の重要人物。森づくりと庭づくりの両方を知る視点は、植栽を“点”ではなく“群れ”として扱う設計に表れる。完成形より、数十年かけて育つ姿を見越して植える発想が読み取れる。

02

駒場野の林を生かす

前田邸の庭は、マツ・ケヤキ・イチョウ・シラカシなどが茂る駒場野の林をそのまま生かして造られた。ゼロから作り込むのではなく、既にあった土地の植生を残し、整えながら庭に取り込む——更地から始めない設計判断は、現代の植栽計画にも通じる発想だ。

03 / 歩く

庭を歩く

歩く順番、基本情報、地図をひと続きで見て、映像がある場合は歩く速度まで確認できます。

この庭の歩き方

視点を少し変えると、庭の考え方が奥深くなる

01

石造りの正門から入る

駒場東大前駅西口から住宅街を抜け、石造りの重厚な正門(重要文化財)をくぐる。左手の木立の間に和館が見えてくる。門と塀も含めて文化財に指定されているので、入口から見ておきたい。

02

和館1階で縁側から庭を眺める

庭園は通常公開時には歩くことができないため、和館1階の無料休憩所に上がり、縁側から眺めるのが基本の楽しみ方。座る位置を少し変えるだけで、開口に切り取られる庭の構図が変わる。

03

茶室まわりと手水鉢を見る

庭側から茶室(又隠の写し)と脇の手水鉢の関係を確認する。茶事の動線がどう石や植栽で導かれているかを意識すると、見え方が変わる。

基本情報

住所
東京都目黒区駒場四丁目3番55号
最寄駅
京王井の頭線 駒場東大前駅(西口)
開園時間
9:00-16:00
休園日
毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月28日-1月4日)
入園料
無料

※ 開園時間・料金・休園日は変更される場合があります。訪問前に公式情報をご確認ください。

入口まわり、駅からの距離、周辺の道を訪問前に確認できます。

Google Mapsで開く

04 / 関連情報

関連する庭の物語へ

この庭で見た要素を、近いテーマの記事や映像へ静かにつなぎます。

Videosを見る

音楽を足さない庭歩き映像で、場所の空気と時間を記録しています。

Videosをみる

取材・PR相談

庭園、庭仕事、文化施設、地域の庭に関する取材依頼やPR相談を受け付けています。

問い合わせる

SNS

YouTube・Instagram・Pinterestでも、庭の映像、写真を展開しています。